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MORNING TALK

朝の心

じっと耳を傾ける

2011.06.27
朝の心

 灰色ずくめの「時間どろぼう」のたくらみから人を救う少女の物語「モモ」は、子供から大人まで多くの読者を魅了してきた本です。
 人々は「時間どろぼう」に、言葉たくみにそそのかされ、仕事も遊びも効率的に時間を節約します。時間を効率化した人々の生き方は、ゆとりある生活になるはずでした。この最初の思惑と異なり、ギスギスした忙しいものになり、恐ろしい事態へと進んでいく・・・という話です。
 「時間どろぼう」にとって大きな障害は得体の知れないモモの存在です。彼女は特殊な能力や魔法を持っているわけではなく、ただ相手の話を耳を傾けて聞く才能がありました。考える暇もない人もモモに話を聞いてもらうと、答えが頭の中から湧いてくるのです。気力を失ってしまった人はモモに話を聞いてもらうと「自分は捨てたもんじゃない」と心の底から勇気がふつふつと湧いてくるのでした。悩み事の解決や名案を考え出すわけではありません。モモは相手の話をじっと聞くだけです。それぞれが自分のうちに持っている答えをモモに話を聞いてもらううちに自分の答えとして自覚するだけなのです。「じっと耳を傾けて人の話を聞く」簡単なようでいて実は大変なことなのです。
 忙しくなった今の時代、もし人の話をじっと聞くことができれば、モモが人々を救ったように、誰かを救うことができるのです。

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