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MORNING TALK

朝の心

初心忘るべからず

2015.10.30
朝の心

先日、NHKの「プロフェッショナル」という番組を見ていたら、無農薬リンゴの栽培で有名な木村秋則さんが出演されていました。驚いたことに、木村さんの口には歯がほとんど残っていません。8年もの間、全くリンゴができず、極貧の生活を送る中歯医者にも行けず、自分で歯を抜いたと言います。ではなぜ、入れ歯などをしないのか。
木村さんは、「自分がみじめだった時を忘れないためだ」と答えていました。
皆さんは、「初心忘れるべからず」という言葉をご存知でしょうか。よく、入学式や始業式の時に、「初々しい今の気持ちを忘れずにがんばれ」などという意味で使われますが、本来の意味は違うと言います。
国語の時に習ったと思いますが、これは室町時代の能楽師、世阿弥の言葉として残されたものです。ここでいう「初心」とは、若いとき、未熟な時のみじめな経験、情けない経験、できなかったことやわからないことを指します。そして、1つの初心が乗り越えられた時、次の段階に進めるのです。そこでまた新たな初心に出会う。その果てしない初心の積み重ねこそが、名人への道であり、芸の無限の可能性につながるというのです。
木村さんは「人間は嫌なことは忘れてしまおうとする。でも私はそれを忘れたくはない。抜けた歯はリンゴを守り抜いた証だ」と言います。
皆さんは、できなかったこと、わからなかったことをどうしていますか?それを目を覆って忘れ去らせてしまうのはもったいないでしょう。皆さんはまだ学生ですから、そんなのあって当たり前。目の前にある「初心」を一つ一つ乗り越えていってみませんか。

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