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MORNING TALK

朝の心

自分の頭で考える

2016.10.26
朝の心

皆さんは今年のノーベル文学賞に、歌手のボブ・デュランさんが選ばれたことをご存知でしょう。その彼は、世間のお祝いの言葉にも一切コメントせず、沈黙を貫いています。普通だったら「ありがとうございます」の一言くらいありそうですが、選考者のひとりも「それが彼ってものだ」と評価しています。時代の流れにあえて乗らず、自分の思いや考えを詩に乗せて歌い上げる彼のスタイルは、今でも健在だということでしょうか。

しかし、時代に逆らう生き方は結構辛いものです。周りの人からの非難にさらされることもあるでしょうし、時にはKYと罵られるでしょう。でも、流されるだけの生き方にも大きな危険が潜んでいます。それは「自分の頭で考えることをやめてしまう」ということです。

ひとつのお話があります。

あるとき百姓親子が市場までロバを売りに行きました。ゆっくりとロバを歩かせながら行くと、通りすがりの人が「一体何のためのロバなのかね。主人が歩くなんて」と笑いました。それを聞いた親子は一緒にロバに乗りました。すると人々が「あれではロバがかわいそうだ。死なせる気なのかね」と口々に言いました。そこで今度は子供を降ろして父親がロバに乗っていると「残酷な父親もいるものだ。小さな子どもは歩かせて、自分はロバに乗るなんて」という声を聞きました。そこで父親は自分が降りて、子どもをロバに乗せました。すると別の人が「なんて親不孝な子なのかね。自分はロバに乗って親を歩かせるなんて」と大声で言いました。とうとう父親は子供を降ろし、ロバの足をくくって棒にぶら下げ、「よっこらしょ」と肩にかついで歩き始めました。すると道行く人々がその姿にクスクスと笑いながら通り過ぎていくのでした。

人の意見に振り回されて自分を持たない人がどのようになるのかを、よく表しています。現代人は答えに迷ったり、どうしたらいいか分からなくなった時、すぐに答えを求めてインターネットなどに頼ってしまいがちです。そしていろいろな意見の間でフラフラすることも多いのです。でもそこで、ちょっと自分の頭で考えて意見をまとめ、行動に移してみたらどうでしょう。失敗もあるかもしれませんが、その経験が皆さんが生きる上での「信念」を作っていくのです。

ボブ・デュランさんが評価されるのも、彼の「信念」がにじみ出ているからかもしれませんね。

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