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MORNING TALK

朝の心

難民選手団

2016.12.10
朝の心

 この夏行われたリオデジャネイロ・オリンピックには、難民となり母国から出場ができない選手で構成された混合チーム・難民選手団が初めて参加しました。その中の一人で水泳選手として参加した18歳のユラス・マルディニさんの話を紹介したいと思います。

 彼女はシリアで生まれ、3歳頃からスイミングスクールに通っていました。夢はいつかオリンピック選手になることでした。ところが13歳のとき爆撃で家を失い、家族を残して姉と一緒に難民の道を選びました。レバノン、トルコを通って大きなボートに乗り、ギリシアを目指しますが、1回目は失敗に終わりました。二人は諦めずに17人で小さなボートに乗り、もう一度ヨーロッパへの脱出を試みます。今度は順調に進んだものの、町の明かりが見えるほどにギリシアに近づいた時、エンジンが故障し前へ進まなくなりました。そこで泳ぎができるユラスさんたち若者3人が水に入って3時間ほどかけてボートを押し、ようやくたどり着きました。それからやっとのことでオーストリアに行き、難民として認められ、ドイツでの暮らしが始まります。やがて彼女は、夢であったオリンピックに出場するために水泳の練習を再開し、リオデジャネイロ・オリンピックでは難民選手団の一人として女子200m自由形に出場することができたのです(カトリック新聞12月4日号参照)。

 この難民選手団は10人の小さなチームでした。南スーダン、エチオピア、コンゴ、シリアなど紛争地域で生まれ、育ち、戦火によって難民となった人たちです。彼らは、現在6200万人と推定される世界中の難民を代表する10人と言えるでしょう。ユラスさんは言います。「これからは東京オリンピックを目指して一生懸命練習したい。そして世界中の紛争地域の悲劇が早く終わるよう、特に小さい子どもたちが救われるように支援してほしい」と。

 今年のクリスマス献金は、こういった難民の人々を支援する団体に捧げられます。今日も世界のあちこちで紛争が絶えず、多くの人々が生きるために難民という道を選ばざるをえません。日本にも2万人もの難民の方々がいます。一方で、このような世界情勢にもかかわらず国と国の境に大きな壁を作ることを主張したり、難民を追い出そうという動きも強く出てきています。教皇フランシスコは、自国だけの利益を考えるそういったやり方に対して「壁を作ってはいけない、連帯を通してしか解決の道はない」とはっきり断言されています。

 皆さんの一人ひとりの世界平和を求める小さな気持ちが、献金という具体的な形を通して困っている人、弱っている人、悲しんでいる人に少しでも届くことを願って、今年も来週から始めるクリマス献金に協力していただければ幸いです。

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