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MORNING TALK

朝の心

“汝、地の塩たれ”

2005.04.26
朝の心

 中学・高校とも新入生が入ってきて、学校全体が活気に満ち、新たな息吹を感じています。新しい世紀の始まりの時、私たちの学院に今、新しい何かが始まるような予感さえいたします。明るく、生き生きとした若さみなぎる学院にしていきましょう。さて、私は今年の学院の目標として『地の塩』という言葉を選びました。塩はそのものとして味わう限り、塩辛いばかりで少しもおいしくはありません。しかし料理の味をつけるには塩は欠かせません。たとえばお汁粉の甘さを引き立たせるのは砂糖だけではなく、一つまみの塩です。塩は甘さとは全く正反対の味なのですが、それを適量に使うことにより、反って甘さを引き立たせる役割を果たすのです。それを隠し味と言います。白壁の白さを一層引き立たせるには、白いペンキに黒の塗料を少し加えて塗ると言います。その色が隠し色になるからです。石垣を積む際には大きくて、頑丈な石の間にどこにでも転がっているような小さな石ころを埋め込むそうです。それが遊び石、捨て石となって、大きな地震がきてもクッションの役を果たし、石垣はいっそう堅固になるのだそうです。いずれも、そのもの単独では重要な意味を持つものではないけれども、ひとたび何かを引き立たせる役にまわるならば、なくてはならない存在になるのです。地の塩になる。私たちが自分の能力や特質を自分一人に留めている限りは、自分の存在は生きてきません。また自己中心的で、自分を目立たせることばかりに躍起になっている人には真の満足感を味わうことはできません。しかし反って自分が友達や周囲の人を引き立たせ、幸せにする役回りになった時、自分の存在は輝き、充実していくのです。人生の隠し味、隠し色、捨て石になる生きかたは決して自己実現とは矛盾しないのです。“汝、地の塩たれ!”

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