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MORNING TALK

朝の心

不老不死の薬?

2012.07.18
朝の心

 目の前に,それを飲むと年を取ることも,死ぬこともなくなる不老不死の薬があるとしましょう。さて,あなたはそれを飲みますか?やめておきますか?今年,高校の人間学(宗教)の時間にいくつかのクラスでアンケートをとってみました。飲む生徒と飲まない生徒,どちらが多かったと思いますか?回答した132人の生徒のうち,飲むと答えた人は14人,親しい人と分けて飲むなどの条件付きで飲むと答えた人が6人,飲まないと答えた人が112人と,圧倒的に飲まない人が多いという結果でした。
 もちろん,どちらが正解ということはありません。飲むと答えた人の中にも,死にたくないという切実な気持ちが表れていたり,未来の世界を見てみたいとか,長生きの経験を生かして世界をより良くしたいなどの前向きなメッセージも見られました。一方,飲まないと答えた人の中に最も多く見られたのは,大切な人が死んでいくのを看取るのがつらいとか,一人ぼっちになってしまうことが怖いというものでした。
そんな中,私がすばらしいと思ったのは,老いることや死ぬことを前向きに受け入れようとする生徒たちの意見でした。いくつか紹介しましょう。「タイムリミットがあることで,この人生をしっかりと生きよう,楽しく後悔のないように生きようと思えるので飲みません。」「年を取っていくことで得られる喜びや悲しみがあると思うので飲みません。」「これからも成長していきたいし,死という命の限界があるからこそ今の一瞬を大切に生きられると思うので飲みません。」「20代・30代とそれぞれの年齢を楽しみたいから飲みません。」
 さて,こうして考えると,終わりがあるのは確かにつらいことですが,終わりがあることで今が輝くというのも事実なのだと思います。人生だけでなく,一日にも,一学期にも終わりがあります。終業式までの日々を,早く夏休みになってほしいと思いながら過ごすのではなく,残された数日だからこそ,精一杯がんばりたいと思って過ごすことができれば,より輝きを放った一学期の締めくくりとなることでしょう。

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