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MORNING TALK

朝の心

塑像

2014.07.14
朝の心

皆さんは美術の時間、図工の時間に何かゾウを作ったことがありますか。ゾウはゾウでも動物ではなく、動かない像です。例えば自分の顔とか友達の手とか。像には作り方によっていくつかあり、木や石などから削って形を作るものを彫像(ちょうぞう)、芯になるモノに粘土などをくっつけて形を作るものを塑像(そぞう)といいます。
わたしも中学3年の美術の時間に、友だちの顔を粘土で作りました。出席番号順であったのでN君という友達とお互いに顔を作りあうことになりました。このN君、結構芸術家で、私が当時コンプレックスを持っていた厚く突き出した唇も忠実に再現してくれたので、彼の作品を見るたびに、ちょっと嫌な気持ちになったものでした。
製作に当たって、美術の先生がアドバイスをくれました。「粘土は小さくとって、顔の中心に向かって貼り付けるように作っていきなさい。そうするとできた形が塊としての強さを持ってきますよ。」
わたしたちの人間形成もこの「塑像」を作るのに似ていると私は思います。長い人生を歩む中で、わたしたちは色々な粘土片を、自分自身にくっつけていきます。ある時はとても小さな「知識」という粘土片かもしれませんし、ある時は余分に大きな「大失敗」という粘土片かもしれません。自分の中心に向けて確信をもって着けられたものは、私自身に力強さを与えてくれるでしょうし、どうしようか迷って中心を外して表面だけにつけられたものは、自分の中に何か違和感を残してしまうのかもしれません。
今わたしたちが、自分にくっつけている小さな「私の経験」「私の決断」という粘土片の一つ一つが私自身を形づくり、最終的に個性的な「自分自身」を作り上げていくのです。人生の最後の瞬間に、長い間かけて作り上げてきた「自分自身」という作品に、はたして自分で満足することができるのか、それは実は、今行っている自分の選択、決断にかかっているのだということです。それが、神様がわたしたちに与えてくれた自由の素晴らしいところであり、大きな責任を伴うことでもあるのです。
粘土彫刻のいいなと思うところは、例え間違えたとしても、乾く前なら修正がきくということです。自分で間違いに気づき、早めに修正することも大切ですね。
さて、皆さんはどんな自分自身という作品を作っているのでしょうか。「こんな人間になりたい」という設計図をしっかり持って、一つ一つの自分の行動を意識していきたいものです。

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