MENU

閉じる

閉じる

MORNING TALK

朝の心

ナナメの関係

2018.06.26
朝の心

人間関係には親と子、先生と生徒といった「タテの関係」と、友だち同士あるいは共通の趣味や興味関心を通してつながる「ヨコの関係」があります。「タテの関係」は上下関係がはっきりしているため、従うか反発するかの二者択一的になりがちです。「ヨコの関係」は仲良くしているうちは楽しいですが、気が合わなかったり、興味が薄れたりすると簡単に関係が崩れ、狭い視野に陥る恐れがあります。

さて、人間関係にはもう一つ、「ナナメの関係」があります。それは、直接の知り合いでもなく、繋がりもない第三者との関係です。相手の立場を気にしたり、感情的になったりすることがないため、相手を冷静に受け入れ、素直に理解しようとする姿勢になります。例えば、「これからの時代、英語は大切だ」とわかっていても、親や先生から「英語は大切だから勉強しなさい」と直接言われたら、「うるさいなー」、「もうわかっているよー」といった感情が先にきて、つい反発してしまうのではないでしょうか。ところが世界で活躍中の有名人や尊敬しているアーティスト、スポーツ選手らが「英語は大切だ」と発言すると、すんなり納得できます。あるいは外国に行ったり、英語を使わざるを得ない状況を体験したりすれば、「もっと英語を勉強しなければ......」と実感します。こういった関係を「ナナメの関係」と言います。  

ニュース解説で有名な池上彰さんが、今ベストセラーの本『君たちはどう生きるか』を読んだのは小学生の時でした。父親が買ってきたそうです。このことについて彼は次のように述べています。「今から思えば、父は我が子に生き方について説教することができず、『この本を読んでほしい』と思ったのではないかと推測します。つまり、父親は我が子との『タテの関係』を避け、この本によって『ナナメの関係』で教える、ということを期待したのではないかと思うのです」と。実際、親から「読め」と言われたら反発したかもしれませんが、結局、読みだしたら面白くなって、気が付くと夢中になって読んでいたと振り返っています(参照『池上彰のこんな本どうですか』)。

ここで、私たちが周囲と築いている実際の人間関係について考えてみましょう。好きな者同士、気の合う者同士だけで関わってはいませんか。そんな人は「ナナメの関係」、すなわち、日ごろ関わりが少ない人や自分と異なるタイプの相手、読んだことのない本や観たり聴いたりしたことのない芸術作品、あるいは未体験のことへの挑戦などを、積極的に取り入れてみましょう。「ナナメの関係」は、自分をより豊かに成長させてくれるはずです。

kokoro5.jpg

閉じる