MENU

閉じる

閉じる

MORNING TALK

朝の心

和顔愛語

2019.04.27
朝の心

 江戸時代末期、新潟県に良寛という和尚さんがいました。良寛の生活はつつましく、みなに親切で決して偉そうにしないため、尊敬されていました。また子どもたちと一緒によく遊び、村人からたいそう人気がありました。そんな良寛には、ある意地悪な船頭とのかかわりを描いたエピソードが残っています。船頭は良寛の人気を妬んでおり、「もし良寛が俺の渡し船に乗ることがあったら、わざと川に落としてやろう」とたくらんでいました。ある日、良寛がその船に乗ることになりました。船が川の真ん中あたりまで来たところで、船頭はわざと船を大きく揺らし、良寛は川に落ちてしまいます。泳げなかった良寛は溺れ、死にそうになって、ようやく船頭は彼を船に引き上げました。そこで良寛は、「助けてくれてありがとう。あなたは命の恩人です。このご恩は一生忘れません!」と船頭に言ったのです。てっきり恨みごとでも言われるかと思っていた船頭は、衝撃を受けました。「仕返しされても仕方がないことをした自分に、御礼を言うなんて......。俺はなんて素晴らしい人を憎んでいたのだろう。そしていつからこんなに人を妬むようになったのか」。その晩 船頭は良寛の家を尋ね、昼間のことを心から詫びました。そしてすっかり心をあらため、良い人になったということです。

「和顔愛語」という言葉があります。「和顔」とは穏やかな顔のこと、「愛語」とは人を温かな気持ちにする言葉という意味です。良寛は、この「和顔愛語」をとても大切にし、いつも実行するようにしていたそうです(『小さな幸せに気づかせてくれる33の物語と90の名言』参照)。

さて、今年度の学院の目標は「Fiatの精神」です。この目標のためにはまず、前向きで明るく、積極的な雰囲気を作ることが大切です。まさに「和顔愛語」の精神を心がけることだと言えます。新学年が始まったこの四月、新入生を迎えたり、クラスメートの顔ぶれが新しくなったり、人との新たな関わりが始まったことと思います。そんな時期だからこそ、周りの人にさりげなく穏やかな笑顔を向け、相手が温かな気持ちになるような言葉を互いに掛け合う雰囲気をつくっていきましょう。「Fiatの精神」は、こうした身近なところから育っていくのです。

kokoro_1.jpg

閉じる