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MORNING TALK

朝の心

もし明日世界が終わるとしても

2019.09.26
朝の心

順天堂大学病院で「がん哲学外来」という珍しい診療をしているお医者さんがいます。樋野興夫(ひのおきお)さんといいます。この先生が書かれたエッセーの一つに、宗教改革で有名なマルティン・ルターの残した言葉が引用されています。「もし明日世界が終わるとしても、私は今日もリンゴの木を植えるでしょう。」 すごく単純だけど、いろいろな意味を引き出すことができる言葉ですね。樋野先生はこの言葉を、自分が見てきたがん患者の方々に向けて、次のように変えて伝えてきたそうです。「明日この世を去るとしても、今日の花に水をあげなさい。」自分の限界が見えてきたときに、自分ばかりを見つめると、すべてが無駄のように思えて、その先は何も見えなくなる。そうではなくて、そんな時こそ、自分以外のものに関心を持ってごらん。そうすれば、自分のやるべきこと、自分の意味や使命が見えてくるからと。

伸びていこう、実を付けようとする生き生きとしたリンゴの木の苗を土の中に植えたり、今にも咲きほころうとする花にそっと水をあげたりすること、目の前の命をそっと支えてあげる何気ないことからも、今まで見えなかった自分の価値が見えてきたりするのではないでしょうか。

「もし明日世界が終わるとしても、自分が手塩をかけて育てることを心に決めたリンゴの木を今日も植えるでしょう」今日も、自分以外の命に目を向ける瞬間を大事にしていきたいものです。

参考:『明日この世を去るとしても、今日の花に水をあげなさい』(樋野輿夫,幻冬舎,2017)

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