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MORNING TALK

朝の心

一人ひとりを思い起こして

2022.03.08
朝の心

私がローマで神父になるための勉強をしていたとき、同じ修道院の2年先輩に2人の東ヨーロッパから来た人達がいました。一人はパヴェル、もう一人はアンドリー。パヴェルは神父を目指しているのにも関わらず少し下品で、聞くに堪えない冗談を言ってくることもありましたが、とても親しみやすい男でした。一方アンドリーはとても親切で、イタリア語に困難を抱えていたわたしをよく世話してくれました。青い瞳でだれでも暖かく迎えられる人でした。彼等と生活したのは1年間だけでしたが、それはわたしにとって東ヨーロッパの存在をぐっと近づける貴重な経験でした。

パヴェルはベラルーシ人、アンドリーはウクライナ人でした。

共に兄弟のように生活した二人は国境を隔てて、今は交流することすら許されない状況にあります。

ウクライナに対してロシアが仕掛けた戦争。ロシアの一方的な攻撃に、世界の多くの国は非難の声をあげています。犠牲者は兵士のみに留まらず、報道によると2000人以上の一般市民の命も犠牲になっていると言います。

なぜ戦争が起きるのかということを、今私はここで述べようとは思いません。ただ、この歴史の大きなうねりの中で、東ヨーロッパから遠く離れた日本にいる私たちのできることは一体何かを皆さんと一緒に考えたいと思います。

幸い、日本はまだ大きな影響を受けずに済んでいます。コロナ禍ではありますが、毎日学校に安全に通えています。スーパーには食料品が豊富にあります。暖かい布団にくるまって静かに寝ることができます。空襲警報が鳴ったり、地下室や風呂場に身を隠したり、爆発音が近くで鳴ったりはしていません。この違いは何のためにあるのか。

遠く離れた人々について、わたしたちは無関心で居てはいけないのです。なぜなら、神様の目から見るとみんな神様によって作られた兄弟だからです。

東ヨーロッパの平和を望むために、わたしたちはロシアやウクライナという国だけを見てはいけないと思います。そこに住んでいるパヴェルやアンドリーを思い浮かべなければいけません。何十時間もかけて国境まで逃げた家族を思い浮かべなければいけません。国境を越えてやってきた人々に暖かい食事と寝床を提供しているボランティアの女性を思い浮かべなければいけません。歴史というのはそういった一人ひとりの存在が作るのです。そして、平和もそういった一人ひとりが作っていくのです。

今日は、最後に一つの祈りで終わります。有名なアシジのフランシスコの「平和の祈り」と呼ばれるものです。一緒に心を合わせて、平和のために祈りましょう。

「神よ、わたしをあなたの平和の道具としてお使いください。

憎しみのあるところに愛を、/いさかいのあるところにゆるしを、
分裂のあるところに一致を、/疑惑のあるところに信仰を、
誤っているところに真理を、/絶望のあるところに希望を、
闇に光を、/悲しみのあるところに喜びをもたらすものとしてください。

慰められるよりは慰めることを、/理解されるよりは理解することを、
愛されるよりは愛することを、わたしが求めますように。

わたしたちは、与えるから受け、ゆるすからゆるされ、
自分を捨てて死に、/永遠のいのちをいただくのですから。」

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