MENU

閉じる

閉じる

MORNING TALK

朝の心

完ぺきではないこと

2022.10.31
朝の心

最近、どうも自分の机の周りがごちゃごちゃしてきて、かたづけるのが下手な私の癖が出てきた気がします。一度こうなると、元に戻すのは大変です。やっぱり、その都度その都度、必要なプリントはファイルしたり、いらないごみは捨てたりするように心がけるべきでしょう。こんな時に「お掃除ロボット」があったらなと思ったりします。

以前、床の上を自動で掃除してくれるロボットが働いている姿を見ましたが、実にけなげでした。部屋の中をちょこまかと動きながら、細かいほこりなどを一つも残すところなく吸い取っていこうとしていました。障害物があまりなければ、このロボットに任せておけば大丈夫です。

でも、そんな完璧な機能を持ったロボットにも、人間はさらに要求度を高めています。「なんでもっと静かにできないのか」「もっと早く終われないのか」「この取りこぼしはいかがなものか」・・・。そうして、そういったクレームから技術者は新たな機能の開発にいそしむことになります。「ロボットの高機能さは、わたしたちの優しさや工夫を引き出すのではなく、むしろ傲慢さのようなものを引き出してしまうようだ」とロボット工学の研究をされている岡田美智男先生が語っています。

以前も紹介しましたが、この岡田教授は「どこか抜けているロボット」を開発している先生です。例えば、自分ではゴミを拾うことができない〈ゴミ箱ロボット〉。このロボットはゴミが落ちているとよたよたとそこに移動していくけど、そのゴミを拾うアームはついていません。その場でまごまごしたり、近くにいる人に向かって声をあげたりするだけです。つまり、できないこと、困っていることを表現して、誰かに助けてもらおうとするのです。するとそれを見て助けてあげようと子どもたちが近づき、無事にゴミを入れてあげるという光景が広がります。

何でもできるようになるために、いろいろな機能を付け加えるのではなく、できないことを他の人に委ねる。そうすると、そこに交流が生まれ、持ちつ持たれつという信頼関係が生まれてくるのでしょう。この「どこか抜けているロボット」が生み出す「優しさ」の不思議に目を奪われました。

人間というものも完璧なものではありません。気がつかなかったり、目が届かなかったりして、「なんでこんなことも分からないのか」とイライラしてしまうこともあります。でも、お互いにできないこと、つまり「弱さ」があって、それをできる人が補い合う関係ができると、大した不満を持たずに生活できるのではないでしょうか。

まずは自分の「弱さ」に気づくこと、そして他の人の「弱さ」を見捨てることなく手を差し伸べる「強さ」を持つこと。これが「なにごとも愛によって行う」ことにつながります。「弱さ」が故に声をあげている人のことを、自分のことのように感じる心を育てていきましょう。

閉じる