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MORNING TALK

朝の心

思い出とともに生きる

2022.11.22
朝の心

 東京都調布市にサレジオ神学院というところがあります。ここは将来、サレジオ会の神父・修道士を目指す人たちが一緒に生活をしながら養成をうける場所で、神学生や神父様たちが生活する建物や教会の他にも2つのグラウンドと体育館、この学校の初代校長チマッティ神父の資料館がある大きな神学院です。そこには若い神学生だけでなく、40代から90歳を超える高齢の神父様や修道士まで幅広い年齢層が20人ほどで生活しています。私も大学に通いながらそこで5年間生活していました。

 その神学院に当時、岡道信神父様という80歳を超えたおじいちゃん神父がいました。1993年から1998年までの5年間、日向学院の第7代校長を務められた神父様です。岡神父様は私をよく気にかけてくださいました。ある日、大学から帰ってきてテレビを見ながらダラダラ過ごしていると、突然、館内放送を使った怖い声で「堤神学生、堤神学生、大至急、岡の部屋まで来てください。」と神学院全体に聞こえる放送で呼び出されたことがありました。何か怒られるようなことをしたかな?と思い当たる節をたくさん抱えながら急いで部屋に行ってみると神父様は「おぉ、よく来たな。エアコンのフィルターを掃除してくれ」と言い、続けて「あれくらい怖い声で急がせないとお前はすぐに来ないからな」といたずらっ子のような笑顔を見せてくれました。そうやって空き時間に部屋に呼ばれることがよくあり、小さな頼まれごとをした後はそのまま部屋で色んな話をし、帰り際にお手伝いの報酬として神父様の本棚から本を数冊もらって帰るのがいつものパターンになっていました。岡神父様は色んな話をしてくださり、私はその雑談の時間が大好きでした。

 ある時、話の流れから神父様に「死ぬのが怖いですか?」と聞いたことがあります。神父様は少し考えた後、「この歳になると死ぬのは怖くないが、死んだ後に人に忘れられるのが怖いなぁ」としみじみ答えられました。その数か月後、岡神父様は脳梗塞で倒れられ、4年半の寝たきりの生活の後、昨年の夏、天に召されました。「死ぬことよりも忘れられることの方が怖い」と言った神父様の言葉が今でも私の胸に残っています。

 カトリック教会では11月は死者の月です。先日私たちは慰霊祭を行い、亡くなった方々のことを思い起こし、お祈りしました。普段の生活の中で、亡くなった方々のことを常に思いながら生活することはあまりないかもしれません。しかし死者の月である今月は意識して身の回りの亡くなった方々のことを少し思い起こして生活してみましょう。もしかすると辛い別れもあったかもしれませんが、その人を覚えている、または度々思い出すことで繋がりは続いていくと思います。何より亡くなった方々を思い、その人との思い出とともに生きていくことは私たちにとって毎日の生活の励みになるのではないでしょうか。

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