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MORNING TALK

朝の心

1月17日

2023.01.20
朝の心

 今日は1月17日、阪神淡路大震災が起こってから28年になります。この大災害にあって被災者の心のケアのために尽力された精神科医の安克昌(かつまさ)さんが書かれた『心の傷を癒すということ』という本を少しずつ読んでいます。安先生は学院と同じドン・ボスコの学校である大阪星光学院の卒業生です。安先生は自らも被災する非常事態の中で全国から来たボランティアの医師たちと協力しながら被災者の心のケアのために働いていきます。描かれる情景の衝撃はすさまじいものでした。住む家、大切な家族を亡くしたたくさんの被災者の方々はもちろんのこと、救助にあたる救急隊員や医療関係者を含めて、すべての人が心に大きな負担を抱えていました。そのような光が見えない状況で無力感を感じながらも安先生は活動を続けていきます。

 心の傷に関しては「安全な環境」で「安全な相手」と「時間をかけること」しかないということ。「心のケアを最大限に拡張すれば、住民が尊重される社会を作ることになるのではないか」ということ。一つ一つのきっかけは小さいものでも、美しい自然との出会いや周りの人から受け入れられる体験などが少しずつ心の傷を癒していくということ。安先生の言葉の端々にサレジアンの香りを感じます。

 本の中で「異常な状況に対する正常な反応」という言葉が印象に残りました。眠れなくなったり、物音や地面の揺れに敏感になったり、気持ちは沈んでいるはずなのにハイの状態になったりといった心と体の反応は決して異常なのではなくて、大震災という「異常な状況に対する正常な反応」なのだと。よく「病んでいる」と表現を耳にしますが、そのような他人や自分の状態に対しても同じような視点を持つ必要があるのではないでしょうか。

 これは異常だと決めつけず、ゆっくり、時間をかけて向き合うこと。安全な環境一人一人を大切にする社会を皆で作り上げていくこと。どんな状況でも人と関わることをあきらめないこと。サレジアンとして大切にしたいと思います。

参照:安克昌『心の傷を癒すということ 新増補版』作品社、2019年

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